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ベリー位相(Berry's phase)

$$\newcommand{\bra}[1]{\left\langle #1 \right|}
\newcommand{\ket}[1]{\left|#1 \right\rangle}
\newcommand{\bracket}[2]{\left\langle #1 \middle|#2 \right\rangle}$$
ハミルトニアン$\mathcal{H}$がとあるパラメータ${\bf R}$に依存する場合を考えよう(たとえば,波数$k$など).パラメータ$\bf{R}$は時間$t$に依存するとする.
このとき,ハミルトニアン$\mathcal{H}({\bf R}(t))$に対応するエネルギー固有値もおなじパラメータに依存して変化するはずである.(ここではパラメータの変化は十分にゆっくりとする:断熱近似)

固有状態$\ket{\phi_{n}({\bf R}(t))}$は次の式を満足するとする:
\begin{equation}
\mathcal{H}({\bf R}(t))\ket{\phi_{n}({\bf R}(t))}=E_{n}({\bf R}(t))\ket{\phi_{n}({\bf R}(t))}
\end{equation}
次に,時間依存したシュレディンガー方程式
\begin{equation}
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\ket{\psi_{n}({\bf R}(t))}=\mathcal{H}({\bf R}(t))\ket{\psi_{n}({\bf R}(t))}
\end{equation}
を考える.ここでパラメータが変化しても固有状態は変化せず$n$のままと仮定して,
$$\ket{\psi_{n}({\bf R}(t))}=e^{i\theta(t)}\ket{\phi_{n}({\bf R}(t))}$$
とおいてシュレディンガー方程式に代入する.
$$i\hbar e^{i\theta(t)}\left(i\frac{\partial\theta(t)}{\partial t}\ket{\phi_{n}({\bf R}(t))}+\frac{\partial}{\partial t}\ket{\phi_{n}({\bf R}(t))}\right)=E_{n}({\bf R}(t))e^{i\theta(t)}\ket{\phi_{n}({\bf R}(t))}$$
ここに,$\bra{\phi_{n}({\bf R}(t))}$をかけると,
$$-\hbar\frac{\partial\theta(t)}{\partial t}+i\hbar\bra{\phi_{n}({\bf R}(t))}\frac{\partial}{\partial t}\ket{\phi_{n}({\bf R}(t))}=E_{n}({\bf R}(t))$$
となるので$\theta(t)$について解けば,
$$\theta(t)=-\frac{1}{\hbar}\int_{0}^{t}E_{n}({\bf R}(t^{\prime}))dt^{\prime}+i\int_{0}^{t}\bra{\phi_{n}({\bf R}(t^{\prime}))}\frac{\partial}{\partial t^{\prime}}\ket{\phi_{n}({\bf R}(t^{\prime}))}dt^{\prime}$$
が得られる.

第1項・・・時間依存のシュレディンガー方程式で必ず出現する位相部分である.ハミルトニアンが時間依存しない場合は$e^{-iE_{n}t/\hbar}$となる.

第2項・・・ベリー位相(幾何学的位相)$\gamma(t)$と呼ばれる.ハミルトニアンが断熱的に変化する場合に生じる位相成分である.($\gamma(t)$は常に実数である.)

$$\gamma(t)=i\int_{0}^{t}\bra{\phi_{n}({\bf R}(t^{\prime}))}\frac{\partial}{\partial t^{\prime}}\ket{\phi_{n}({\bf R}(t^{\prime}))}dt^{\prime}$$

さらに時間微分を変数変換しパラメータ微分に置換すると,
$$\gamma(t)=i\int_{{\bf R}(0)}^{{\bf R}(t)}\bra{\phi_{n}({\bf R})}\frac{\partial}{\partial {\bf R}}\ket{\phi_{n}({\bf R})}d{\bf R}$$
となる.
ここからは簡単のため,パラメータ${\bf R}$は3次元として$\partial/\partial{\bf R}=\nabla_{{\bf R}}$とすれば,
$$\gamma(t)=i\int_{{\bf R}(0)}^{{\bf R}(t)}\bra{\phi_{n}({\bf R})}\nabla_{{\bf R}}\ket{\phi_{n}({\bf R})}d{\bf R}$$
と表すことにする.
ここでパラメータ${\bf R}$は曲線$C$上をたどり,周期$T$で1巡するとしたら${\bf R}(0)={\bf R}(T)$であり,
$$\gamma(t)=i\oint_{C}\bra{\phi_{n}({\bf R})}\nabla_{{\bf R}}\ket{\phi_{n}({\bf R})}d{\bf R}$$
とかける.
また,ゲージ場に相当するベリー接続(Berry connection)${\bf A}^{n}({\bf R})$を
$${\bf A}^{n}({\bf R})=i\bra{\phi_{n}({\bf R})}\nabla_{{\bf R}}\ket{\phi_{n}({\bf R})}$$
として定義しよう.ストークスの定理を用いて,線積分を面積分の書き直せばベリー位相は次のように書き直すこともできる:
$$\gamma(t)=\int\nabla_{{\bf R}}\times {\bf A}^{n}({\bf R})d{\bf S}$$
この積分要素はベリー曲率(Berry curvature)を呼ばれ,
$${\bf B}^{n}({\bf R})=\nabla_{{\bf R}}\times {\bf A}^{n}({\bf R})$$
のように表される.
ベリー接続とベリー曲率は電磁気学のMaxwell方程式におけるベクトルポテンシャルと磁束密度に類似している.


参考文献
[1] 斎藤英治,村上修一,『スピン流とトポロジカル絶縁体 ―量子物性とスピントロニクスの発展― (基本法則から読み解く物理学最前線 1)』
[2] J. J. Sakurai,J. Napolitano,『現代の量子力学(下) 第2版 (物理学叢書)』
[3] 多々良源,『スピントロニクスの物理―場の理論の立場から (物質・材料テキストシリーズ)』




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[ 2019/08/15 22:43 ] 物理 | TB(0) | CM(0)

薄膜に対する光の反射

 各層における屈折率をそれぞれ$n_{1}$,$n_{2}$,$n_{3}$とおく.この多層膜の反射係数$r_{13}$,透過係数$t_{13}$,反射率$R_{13}$を求める.反射係数および透過係数は反射光電場と透過光電場の無限級数和で計算することができる.ここでは,計算結果のみを記す.

$$ r=\frac{r_{12}+r_{23}\exp{(2k_{2z}di)}}{1+r_{23}r_{12}\exp{(2k_{2z}di)}} $$
$$ t=\frac{t_{12}t_{23}\exp{(2k_{2z}di)}}{1+r_{23}r_{12}\exp{(2k_{2z}di)}} $$

ここに,$d$は2層目($n_{2}$)の膜厚である.また,$k_{2z}$は波数ベクトルの$z$成分であり,層2における屈折角$\theta_{2}$と波長$\lambda$を用いて,
$$k_{2z}=\frac{2\pi}{\lambda}n_{2}\cos{\theta_{2}}$$
と記述される.
反射率$R$は反射係数$r$の2乗の大きさから求められる.反射率$R_{13}$の入射角依存性を以下に示す.

Ref_v2.png

2層目の膜厚は$d=500$ (nm),波長は$\lambda=500$ (nm)とした.屈折率は$n_{1}=1.0$,$n_{2}=1.5$,$n_{3}=1.0$としており,この状況ではp-偏光にBrewster角が存在し,s-偏光の反射率は入射角の増大につれ単調に増大する様子が見て取れる.

 次に,2層目の膜厚に対する反射率のふるまいを見てみよう.条件は上と同様であり,入射角は0度で膜に垂直に入射させた.

Ref_thick_dep_v1.png

反射率は膜の厚さに対して振動しながら周期的に変化することがわかる.波長の長さに対応した特定の膜厚で強め合いや弱め合いが起こる.

参考文献
[1] 梶川浩太郎,岡本隆之,『Pythonを使った光電磁場解析』


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[ 2019/08/01 13:58 ] 物理 | TB(0) | CM(0)

反射と屈折

2つの媒質の界面に光を入射する場合を考える.(入射側を媒質1,透過側を媒質2とする.)
この場合の偏光方向は2つあり,入射面内で振動するp-偏光と入射面に垂直に振動するs-偏光がある.前者はTM偏光(Transverse magnetic polarized light),後者はTE偏光(Transverse electric polarized light)とも呼ばれる.

trans_reflect.png

光が屈折率の異なる界面を通過するとき,以下に示すスネルの法則(Snell's law)が成立する.
\[n_{1}\sin{\theta_{1}}=n_{2}\sin{\theta_{2}} \tag{1}\]

入射光に対する反射光の電場の大きさの比を反射係数と呼び,$r_{12}$と書くことにする.また,入射光に対する透過光の電場の大きさの比は透過係数と呼ばれ,$t_{12}$と表すことにする.

 以下にs-偏光とp-偏光の反射係数$r_{12}$および透過係数$t_{12}$を示す.
\[r_{12}^{s}=\frac{n_{1}\cos{\theta_{1}-n_{2}\cos{\theta_{2}}}}{n_{1}\cos{\theta_{1}}+n_{2}\cos{\theta_{2}}} \tag{2}\]
\[t_{12}^{s}=\frac{2n_{1}\cos{\theta_{1}}}{n_{1}\cos{\theta_{1}}+n_{2}\cos{\theta_{2}}} \tag{3}\]
\[r_{12}^{p}=\frac{n_{2}\cos{\theta_{1}-n_{1}\cos{\theta_{2}}}}{n_{2}\cos{\theta_{1}}+n_{1}\cos{\theta_{2}}} \tag{4}\]
\[t_{12}^{p}=\frac{2n_{1}\cos{\theta_{1}}}{n_{2}\cos{\theta_{1}}+n_{1}\cos{\theta_{2}}} \tag{4}\]

下図に反射係数$r_{12}$,透過係数$t_{12}$の入射角依存性の計算結果を示す.実線は透過係数,破線は反射係数を表しており,赤色はp-偏光,青色はs-偏光に対応する.ここに,媒質1と媒質2の屈折率はそれぞれ$n_{1}=1$,$n_{2}=1.5$とした.

tra_ref_v1.png

入射角を大きくするにつれ透過係数は単調に減少していき,入射角90$^{\circ}$ではゼロになる.また,p-偏光とs-偏光では透過係数は必ずしも一致しない.反射係数も入射角増加につれ,単調に減少する.ここに,p-偏光の反射係数はある入射角でゼロになり,その前後で符号が逆転することに注意する.

 入射光強度に対する反射光強度の比は反射率$R$と呼ばれ,透過光強度との比は透過率$T$と呼ばれる.ここに,光の強度$I$は以下のように表される.
\[I=\int_{0}^{2\pi}E\times H dt=\frac{1}{2}|E_{0}||H_{0}|=\frac{n}{2Z_{0}}|E_{0}|^{2}\tag{5}\]
($Z_{0}$は真空のインピーダンスであり,$Z_{0}=\sqrt{\mu_{0}/\varepsilon_{0}}$である.)ざっくり言えば,電場の2乗が光の強度に対応する.
 さて,反射率$R$,透過率$T$は以下のように表される.
\[R=rr^{\ast}\tag{6}\]
\[T=\frac{n_{2}\cos{\theta_{2}}}{n_{1}\cos{\theta_{1}}}tt^{\ast}\tag{7}\]
透過率の表式にcosの比が現れるのは,屈折により光の波数の$z$成分が変化するためである.媒質の吸収が存在しなければ,エネルギー保存則$R+T=1$が成立する.

下図に反射率$R$,透過率$T$の入射角依存性の計算結果を示す.媒質の屈折率は反射・透過係数の場合と同様にした.

tra_ref_v2.png

p-偏光に着目すると,反射率$R_{12}^{p}$は入射角0$^{\circ}$ではゼロでない有限値をとっているが,入射角度を増大するにつれ減少していき、とある角度でゼロになる(今の場合,55$\circ$くらい).この角度はブリュースター角$\theta_{B}$(Brewster's angle)と呼ばれ,$\theta_{B}=\arctan{(n_{2}/n_{1})}$である.Brewster角では反射率0,透過率1となるため,高出力のレーザー出射窓の設計に用い,レーザーの反射による損傷を受けないようにしている.

 一方で、s-偏光の場合はp-偏光の場合と異なり,入射角に対し単調に変化する.また,s-偏光の光のほうがp-偏光に比べ反射率は常に高くなる.

参考文献
[1] 梶川浩太郎,岡本隆之,『Pythonを使った光電磁場解析』

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[ 2019/08/01 06:23 ] 物理 | TB(0) | CM(0)

電気伝導入門(裳華房)


電気伝導入門 (物性科学入門シリーズ)
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電気伝導現象の入門書であり、Ohmの法則からから始まりバンド理論やBoltzmann方程式などの微視的な視点からの理解まで平易にまとめられており、固体物理の基礎を復習しながら電気伝導現象を学ぶことができる。後半では、雑音や非線形伝導、量子Hall効果、トポロジカル絶縁体、超伝導などの発展的な話題にも触れられている。随所に実験データも載せられている点は良い。

ページの都合上のためか、広く浅くといった感じであまり深い話題は載っておらず、物足りない感は正直否めない。B4やM1の初学者向けといった印象を受ける。量子Hall効果やトポロジカル絶縁体に関しては村上・斎藤の『スピン流とトポロジカル絶縁体 ―量子物性とスピントロニクスの発展― (基本法則から読み解く物理学最前線 1)』を読んだほうがいいかと思われる。

また、実験の実践的な面に関してもあまり載っておらず、大塚・小林の『丸善実験物理学講座〈11〉輸送現象測定』のほうが詳しく実践的である。

雑音や非線形伝導の項目の詳しい話題を期待して購入したが、個人的にはあまり満足できなかった。やはり入門者向けというテーマで書かれていると思われるので、意図的に深入りしていないのだろう。知らない人にとって知る足掛かりにはなるかと思われる。

電気伝導は我々の生活を支えるエレクトロニクスの根幹ともいえる現象であり、物性物理学においても興味深い現象の宝庫である。基礎と応用の両観点からしても電気伝導を学ぶ意義は大きい。本書は電気伝導現象のちょうどいい入門書や参考書として役立つ存在になるいった感じか。



[ 2019/07/24 07:42 ] 物理 | TB(0) | CM(0)

Bibtexの使い方


何番煎じか分からないけど、一応使い方をまとめておく。

[ 2019/02/25 00:33 ] 雑記 | TB(0) | CM(1)